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2012/06/10

天の声のよしなしごと


雨が降っていようが関係ない。

それが今なら、ただ、走れ!









今日は雨。
ゆあさコーポレーションがある街にも雨が降っている。
今日は一日中、止みそうにない。





















ーゆあさコーポレーション上空ー
(天の声がぼんやり下界を見ている)


はぁ。
つまんねぇなぁ。


雨の日はみんな家でのんびりだもんなぁ。
今日土曜日だし。
天気担当のやつ頑張り過ぎだよ。
さてはあいつふられたな。くっくっく。



おっ。
もっと降ってきやがった。
聞こえちゃったかな。


(雨が本降りになる。ザーザーザー)


今日はなんにもなさそうだな。
そろそろ帰ろうかn....。
ん?
あいつはたしか、
あおいだ!




(あおいがゆあさコーポーレーションの駐輪場に出てきた。どこかにでかけるようだ)



おいおいこのタイミングで、お出掛けかよ。
今一番強く降ってきたっていうのに、
あいつばかだなぁ。



(あおいが傘をさし、自転車にまたがる。ズボンがサドルに残った雨で濡れる。あおいは気にしない)






(あおいは、ここから3駅ほど離れた本屋に行くため、最寄りの駅に向かおうとしていた)



おいおい。
なにもこんなタイミングで行かなくても...。
今一番降ってきたっていうのに。


(あおいは走り出した。今日一番の雨が、あおいの傘をよけて、容赦なく彼を濡らす。ザーザーザー)



ああ...。
ぐちゃぐちゃじゃねえかよ。
しかも、なんであいつ休みの日までスーツなんだ?



(あおいのダークスーツの足の先が、雨によってより濃い黒へ染められていく)


(あおいは自転車を飛ばした。いつもより、ペダルを強く踏む。もちろん、速く駅について雨を凌ぎたいっていう気持ちがあった。だから雨の道を、いつもより速く駆け抜けた。



けっこうしんどいな。


(あおいは思った。そんな彼を、天の声はじっと目で追っている)



ああ。
なんだかエネルギーがあるなぁ。
それにあいつ、ちょっと笑ってねえか?




(あおいは全然笑ってなかった。むしろ苦しい顔をしてたと思う。けど天の声には違って見えた。それから天の声はこんなことを考える)



なんか今、大事なことが分かった気がする。
人が何かを始めようとしたとき、色んな障害があるけど、それは雨みたいなもんなんだ。



知り合いからの助言だったり、ルールだったり、タイミングだったり。
自分が行きたい方向に立ちふさがるものは、色々あるかもしれない。
けどそれは雨と同じで、天の気まぐれみたいなものなんだと思う。
自分が間違ってるとか、そんなこととは関係なく。
誰にでも平等に降る雨。
そこで外に出ないのは、簡単だ。
家に居れば濡れることもないし、のんびりぬくぬくできる。
明日は晴れるから、明日出掛ければ良いや。
きっとこれは賢いことだ。正解だとも言える。
雨の日に出かけるやつは馬鹿だ。
なんで無理してそんなことをする。
あおい。
お前は、ばかやろーだ。
全然世界が見えてない。





だけど、そんなあおいがかっこ良く見えたのだ、今日は。


雨の中、自転車を飛ばすあおい。
そんなあいつに、強いエネルギーを感じた。
雨が降っているからって関係ない。
本屋に行きたいから行く。
自分の衝動に、体を任せたエネルギー。
みんなが家でのんびりしている時に、
雨に濡れながらも走り続けたあいつの背中が、かっこ良く見えた。




雨と言う障害をものともしないで、ズンズンと進むあおい。
晴れた日には生まれないであろうエネルギーが、
彼に宿っているいるように感じた。


「今」


それを決めるのは自分なのかもしれない。
というか自分だ。
自分しかいない。
その気持ちさえあれば、どんな雨でも傘一本で乗り越えていけるのかもしれない。
家でのんびりしてる自分とは、違う自分に出会えるのかもしれない。
雨だろうとなんだろうと、ぶっ飛ばせる。
自分が、「今」と思った、その気持ちには、
そんなエネルギーがある、と思う。




天の声がこんなことを考えたのはきっと。
雨で暇だったからであろう。




そう。
これは、雨の日の話。
天気担当の機嫌が、どうにも良くない日の話だ。







その頃あおいはと言うと。
ようやく乗り込んだ電車が人身事故で全然動かず、スーツもジメジメ。
靴下もちょっと濡れてて気持ち悪い。
髪型なんか、無惨な感じ。

色々ぐちゃぐちゃな自分を見て。
会社に居ればよかったな、と後悔していた。





そんなあおいの心情なんか、知る由もない天の声は、
どこか満足そうに、天に帰っていく。




ようやく動き出した電車。
あおいが電車の窓から外を見ると、
天の声の帰宅でより一層機嫌を悪くした天気担当が、さらに強い雨を街中にばらまいていた。












今日も読んでくれてありがとうございます。
根拠のない感情が、この世で一番強いんじゃないかと、最近考えます。




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