ページ

2012/06/06

『舟を編む』 辞書に触りたくなる本

「右」
左ではない方。
お箸を持つ手の方。
北を向いた時に、東にあたる方。

こんなことを考えていると、辞書が出来ます。
ザブーン...ザブーン...


























ーゆあさコーポレーション秘書室ー

(ほそかわが広辞苑を開いて、なにやらブツブツ言っている)


ほぅ。
これが「ぬめり感」かぁ。
たしかにめくりやすい。
まるで指の腹に吸い付くようだ。
それでいて、2枚同時にめくれたりすることもない。
うーむ。
こういうところにこだわりが....。
おっと、こだわりは褒め言葉じゃないんだった。





どうもみなさん。
こんにちは。
秘書のほそかわです。


今日は、『舟を編む』を紹介したいと思います。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------
これは、「辞書」に人生を懸ける者たちのはなし。


玄武書房の辞書編集部に勤める荒木は、人生のほとんどの時間を、辞書を創ることに費やしてきた。
彼は言う。
「辞書は船だ。言葉という大海原を、人々が安心して渡るための船なのだ。人が何かを伝える時、その手段になるのは言葉であり、その言葉を正確に、不安なく使うために辞書はある!」


彼には夢があった。
それは新たな辞書、『大渡海(だいとかい』の編纂。
これは壮大な夢だった。その夢の実現のために何年かかるか分からない。
今年定年を迎える彼には、無謀な夢だった。
「誰かに『大渡海』を引き継がなければ.......!」
彼は必死になって探した。自分の夢を引き継いでくれる人物を。
この大事業を担うにふさわしい人物を。


そんな荒木の前に、一人の男が現れた。
辞書を創るために生まれてきたような男だった。
「この男ならきっと...」
今、『大渡海』という舟を編む、壮大な物語が始まろうとしていた...。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------


ほほっ
面白かったですよー。



みなさん。
最近、紙の辞書を引くことありますか?
わたしはあまりないんです。
あまりというか、全然ないんです。


今は、電子辞書もあるしスマートフォンもあるし、インターネットで検索すればすぐに言葉の意味が分かる。
それに比べて、紙の辞書は、なんだか調べるのに時間がかかりそうだし、重そうだし、どこにあるか分からないし。
正直使う気しないなぁ、っていう感じですよね。



『舟を編む』は、そんな紙の辞書をつくるおはなしです。



言葉に懸ける想い

みなさんの近くに紙辞書があれば、「愛」と引いてみて下さい。
なければ、スマートフォンでもパソコンでも良いので、「愛」と打ってその意味を調べてみて下さい。


みなさんの辞書は、「愛」をなんと定義していますか?



わたしの手元にある、『広辞苑 第三版(何版かが辞書の世界ではすごく大事)』では、次のように定義しています。


あい【愛】①親兄弟のいつくしみ合う心。広く、人間や生物への思いやり。万五(←用例の出典、万葉集第五章だと思う)「ーは子に過ぎたりといふこと無し」。「人類ー」
男女間の愛情。恋愛。
(このあとは省略)


①の「親兄弟」の愛や生物への愛は、納得ですよね。
けれど②の、「男女間」の愛はどうでしょうか。




『舟を編む』の中でも、この「男女間」という文言は議論の的となっています。

「なぜ男女間だけなのか」
「同性愛者はどうなるのだ」

ちょっと視点は違うのですが、
「愛妻の愛と、愛人の愛は何が違う?」
といったことまで、彼らは追究します。




突然ですが、この議論の中で出てきたセリフの中で、わたしが「ああ、良いなあ」と思ったものを紹介しましょう。
それはこんなセリフです。

「もし、同性愛者の人がこの「愛」の定義を見たらどう思うだろうか。きっと、「自分が抱くこの感情は愛ではないのか...」と、落ち込んでしまうのではないだろうか。でも、ここの定義が「男女間の愛情」ではなく「他者への愛情」だったら、その人を勇気づけられるかもしれない。この言葉の定義が、その人にどんな影響を与えるか。そういう視点が、辞書を編纂する上でも必要なんじゃないか」
「じゃあ、ここは「他者への愛情」にしますか?」
「それがいい」


いいですねぇ。


このセリフには、言葉を定義するものの使命と苦悩が表れていると思います。




言葉というものは雲のようなもので、そのカタチは刻々と変化していきます。
その言葉のカタチを掴んだと思った次の瞬間、それは指の隙間からスルスルと逃げていき、霧散する。
「辞書を編む」とは、そんな言葉たちの一瞬を切り取り、そのカタチを決定づけるということです。
そして、変わり続ける言葉のカタチを追い続けることでもあります。
つまりは、終わりのない作業なのです。
言葉との永遠の戦い。
それが辞書をつくる者にとっての使命なのです。



『舟を編む』の雰囲気

わたしが「むつかしい」言葉を使って紹介したものですから、みなさんも「この本ちょっと固そうじゃない?」と、思ってしまったかもしれません。



けど全然そんなことはなく、なかなか軽快な本だと言えるでしょう。
クスクス笑えるし、なんだかホッとします。
それでいて、心の奥深くまで刺さるような言葉もあるし、読んでるこっちまで悔しくて涙を流してしまうような場面もある。
不思議で魅力的な本です。

『舟を編む』、
言葉を扱う全ての人にとっての、傑作と言って良い本です。



まるで稲妻のように、あなたの言葉に対する考えを変えてくれると思います。
是非読んでみて下さい。





【追記】
読んだ人に伝われば良いんですが、西岡と麗美の最初のやりとりがたまらなく好きです。
あの雰囲気はいいですねー










今日も読んでくれてありがとうございます。
面白い本はエネルギーを与えてくれますね!




お願い

面白い漫画、オススメの小説、どんなものでもどんなジャンルでも読むので、教えて頂けると嬉しいです。
コメント、twitter、Facebook、どっからでも良いので、反応くれるとすごくすごく嬉しいなぁ。






ランキング参加中!!
下のボタンをクリックしていただけると励みになります!!

書評・レビュー ブログランキングへ


ちなみにキャラ投票も細々とやってます。
(PCはサイドバー、スマートフォンは一番下かな?よければ投票してください)






0 件のコメント:

RAKUTEN